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紫色の月光

紫色の月光

第六話「沈黙の襲撃者」

第六話「沈黙の襲撃者」



 マーティオは大鎌の柄を使うことによって、サイボーグ刑事のローキックを防いだ。そのままマーティオはナイフを抜き取り、

「喰らえ」

 サイボーグ刑事の顔面目掛けて真っ直ぐ突き出した。サイボーグ刑事はゴツイ仮面によって顔の上半分を隠しているが、下半分は地肌剥き出しだ。サイボーグというからには効くかどうか微妙なところなのだが、それでも相手を怯ませる事くらいは出来るはずである。しかし、

「やらせんぞ!! 喰らえ、ジャスティスビーム!!」

 何とサイボーグ刑事のごついマスクからビームが発射されたのだ。至近距離で発射されたのだが、マーティオはこれをサイズの曲刃で防御する。
 その刃はサイボーグ刑事のジャスティスビームを完全に防ぎ、しかも無傷である。

(流石に最終兵器というだけはある………ってか!)

 マーティオは一旦、サイボーグ刑事から離れた。
 今のは彼の超人的な反射神経で何とか防御できたのだが、

(もし次にぶっ放されたら……当たるかもしれんからな)

 無論、ビームなんて物を受けて生きている人間はいない。どんなに鍛えても、光波熱線に耐えられる人間なんかいないのだ。というかいたら恐い。

(しかし………目からビームにロケットパンチと来たら次はやっぱり?)

 マーティオはサイボーグ刑事を睨みつつ、次の攻撃に備えた。それに応じるかのようにサイボーグ刑事が技名を叫ぶ。

「冷凍ビーム!!」





 ネルソン・サンダーソン警部は相棒のジョン刑事と共に宿敵、怪盗二人組を追っていた。――――――無論、その二人組みが刑務所で大暴れしているなんて事は知っているはずがないネルソンは、ひたすら何か手がかりは無いかと街中を歩き回っているのだ。

「ところで警部。個人的に目茶苦茶気になる事があるんですけど」

「何だ? ジョン。言ってみろ。俺は質問なら給料以外、大抵答えてやる」

「安心してください。いくら貰っているか全員知っていますので」

「何!? 何故知っているのだ!? しかも全員!!」

 慌てて後ろを振り向くネルソンだが、ジョンは冷静な顔で答えた。

「前に全員が、全く同じメールを受け取った事があるんです。そこにはネルソン警部の給料と言うタイトルがつけられていまして。ええと、確か……………これです」

 ジョンは自分の携帯を開いて、問題のメール画面をネルソンに見せる。
 すると、ネルソンはそれをジョンの手から乱暴に奪い取り、真剣な顔でメール画面を見始めた。

「………しかし、それが本当だとして、減給されすぎじゃないでしょうか? まあ、いくら失敗続きの警部でもそこまで酷い事は無いでしょう?」

 半分嫌味なジョークが入っているジョンの言葉なのだが、ネルソンは笑わない。それどころかドンドン顔色が悪くなっていっている。

「ど、どうしたんですか? ネルソンけ―――――――」

 しかし、名を呼ぶ前にネルソンに首を締められた。

「ジョン! 誰からだ!! 誰からこのメールを受けとった!?」

 ネルソンはジョンを上下に揺さぶる。その度にジョンの命の火が今にも消えそうになる。

「け、警部………はなじでぐだじゃい………し、死ぬ……」

 前にもこんな事があったな、とジョンは思ったのだが、その時よりも遥かに強い力のため、気を失うのが早かった。無論、その分ネルソンが自殺衝動に駆り立てられるのも前回よりも早いのは言うまでも無い。

 因みに、ネルソン・サンダーソンの給料をジョンたちに教えたのは他ならぬマーティオであり、彼が面白半分で送信したのだ。
 尚、彼がどのような経緯でネルソンの給料の額を知ったのかは見事なまでに謎につつまれている。そこら辺がマーティオという男の恐ろしいところの一つでもあるのだ。


 


「………っくしゅん!! …………誰だ? こんな時にこの俺様の恐ろしさを今頃噂している奴は」

 マーティオは先ほどの攻撃を何とか避けていた。
 先ほどまで彼がいた位置には氷の塊が出来上がっており、南半球に位置するオーストラリアでは見られることが無いような光景が出来上がっていた。それはある意味では芸術品といってもいい。
 しかし、

(ロケットパンチに目からビームに冷凍ビームって………何処のスーパーロボットだ? あいつは)

 マーティオはどうもサイボーグ刑事を作った所が気になって仕方がないようである。
 そこで、彼は思い切って聞いてみることにした。

「おい、貴様。すっごく聞きたいことがあるぞ、喜ぶがいい」

「貴様が何故そんなに偉そうにしているのかが疑問だが、いいだろう。何だ?」

 サイボーグ刑事はファイティングポーズのまま―――――――何時でも攻撃できる姿勢のままマーティオを見る。

「貴様、超合金製か?」

「………………何だと?」

 サイボーグ刑事は突然意味不明なことを言い出したマーティオを睨みつける。

「何? 聞こえなかったのか? ならばもう一度言ってやるから有難く思え。――――貴様は超合金製なのか、と聞いているのだ」

 いや、むしろ、とマーティオは付け足す。

「貴様、光○力研究所でサイボーグになったな!!」

「何だ!? それは!!」

「否定したい気持ちも分からん事は無い。しかし、いずれジェット○クラン○○もついて空の敵を倒せるようになるはずだ!!」

 サイボーグ刑事の背中にはブースターがついているのだが、そこら辺はマーティオが勝手に低空飛行しか出来ない物だと判断していた。

「いや、だからそれは一体何かと………」

「いや、そうなればいずれ兄弟ともいえる偉大なサイボーグが誕生する事になる。安心しろ、貴様は一人ではないのだ。………未来系でな」

「…………貴様は先ほどから人の話を聞いているのか?」

 怒りのオーラがサイボーグ刑事の体から吹き出ている。しかしマーティオは、

「何だと? 今度は腹からミサイルでも出すのか? それとも口から竜巻か? もしくは必殺の熱線でも………」

「貴様とは会話が噛み合わない物だと判断させてもらうぞ。極悪人」

 サイボーグ刑事は左手をマーティオに向ける。
 すると、その左手が胴体から離れ、まるでミサイルのように飛んできた。
 しかし、マーティオは動じない。

「俺なりに考えたそのロケットパンチの弱点を教えてやる。覚悟するように」

 すると、マーティオは突っ込んでくるロケットパンチを、事もあろうか開脚前転を行う事で回避した。そのまま素早く起き上がると、サイズをロケットパンチとサイボーグ刑事を繋ぐワイヤーに振りかざした。

「はい、ここ多分テストに出ますよ?」

 何故か疑問系で言ったと同時、大鎌の曲刃がワイヤーを切り裂いた。
 そのままロケットパンチは何処かへと飛んでいき、戻ってこなかった。

「さあ、どうする? この俺様にロケットパンチは効かないぞ」

「ふん」

 すると、サイボーグ刑事のロケットパンチを発射した左腕から光が溢れ出した。
 それは徐々に形を形成していき、最終的には、

「レーザーソード……!」

「極悪人、俺は手加減をするつもりは無いぞ。悪人は即逮捕だ」

「鉄の城に無い武器を装備してるからって偉そうに………」

 マーティオは大鎌の柄を両手で握る。それは第二ラウンド開始の無言の合図だった。





 ネルソンとジョンは街の中を歩く。
 ディーゼル・ドラグーンによって破壊されたビルは復興作業中であり、所々に工事現場が出来上がっていた。

「警部。先ほどの話の続きですが………」

「ジョン。給料の話は無用だぞ」

「いえ、その前に聞きたかったことです」

 それはネルソンによって首絞めを喰らった為に聞けなかったことなのだが、その原因である給料の話は先ほど終わったので、ジョンは安心して話を切り出す事が出来た。

「警部。本当なら最初に聞いておくべき事なんですけど、その犬は何ですか?」

 ジョンは自分達の先頭になって進んでいる犬に目をやる。
 その犬の首輪から伸びているロープを握っているのは、他ならぬネルソンである。

「見て分からんのか? ジョン。警察犬だぞ」

「わん!(おう、今頃存在に気づいた、みたいな会話するんじゃねぇぞ!)」

「何か今、犬に馬鹿にされたような………」

「わん!?(お、もしかして俺の言葉が微妙にわかったりしてるの!?)」

 犬はジョンに何かを訴えるような目で見ている。
 しかし、やはり言葉の壁は高すぎた。

「で、何だってまたその警察犬を我々は連れているんでしょうか?」

 ジョンが言うと、ネルソンはポケットの中からハンカチを取り出した。
 しかし、それはネルソンの所有物ではない。

「ジョン。こいつは前に怪盗シェルが落としたと思われるハンカチだ」

「……………………もしかしてそれの匂いを探すと?」

「よく分かっているじゃないか。その通りだぞ」

 しかし、そんな物でこの広大な世界のどこかに潜む一人を探し出す事が出来るのだろうか、とジョンは思った。本来なら、ここで二人と言いたいところではあるのだが、ここは敢えて言わないでおいている。
 その時である。

「わん!(見つけたぜ!)」

「むっ!? どうやら早速反応有だ!! 走るぞ!」

 ネルソンと犬が走る。そしてそれをジョンが追いかける。

「け、警部!! ところでそのハンカチがシェルの物だという証拠かなんかはあるんでしょうか!?」

「そんな物無い! 俺の勘だ! このハンカチは必ずシェルとなんらかの関係があるはずなのだ!!」

 その恐ろしいほどの自信は何処から? と思うションなのだが、それは今に始まった事ではなかった。前のピエロだってそれで大変な目にあってしまったことを忘れているようである。

「わんわん!(近いぜ、警部さんよぉ!)」

「おお、そろそろターゲットが近づいている様だぞ!!」

「警部! 貴方は犬の言葉が分かるんですか!?」

「馬鹿者! そんな事を言っているような気がしただけだ!」

 しかし、その勘が合っているんだから恐ろしい。
 無論、そんなことをジョンが知るはずが無い。

 二人と一匹が走っていると、その視界に一人の男の姿が映し出された。
 白衣を着た老人である。しかも妙に健康そうな。

「わん!(警部さんよぉ。あいつだぜ!)」

「よし、ジョン! 大至急、奴を逮捕しろ!!」

「いや、あれが怪盗なんですか!? つーかやっぱり警部はドックヴォイスなる簡単言うところの犬語が分かるんですか!? どうもさっきから犬と会話が成立しているような」

 もはやジョンは頭の中が混乱して何が何だか分からない状態になってしまった。これもネルソンと言う男とコンビを組まされた悲劇が起こした結果である。

「ジョン。そんな事はどうでもいい。奴を逮捕して即刻牢屋にぶち込んでくれる!!」

「警部! もしもあの人が無関係だったらどうするつもりなんですかっー!?」

 ジョンの問い――――もとい叫びにネルソンは答えなかった。代わりに、何故か犬が答える。

「わんわん!(兄ちゃん、大変だな!)」

「なんか良く分かりませんが、凄い同情されているような………」

 実際そのとおりだったりするのだが、勿論ジョンが知っているはずが無い。

「たぁぁぁぁいほだぁぁぁぁっ!!!!」

 ネルソンは右手に手錠を持って老人に飛び掛る。某大怪盗三世もビックリの飛び掛りっぷりである。

「うおっ!? 何じゃお主!?」

 その老人の名前はニック。前回マーティオに散々酷い目にあった老人である。
 ニックの視界には、警官が手錠をもってこちらに猛突進してくる場面が描かれていた。
 
「うおぉぉぉぉぉっ!! ワシが何をしたというのですかぁぁぁぁっ!!」

 ニックは逃げた。
 力の限り逃げた。
 全速力で逃げた。
 過去に町内マラソン大会一位と言う実績を覆してもいいくらいの気持ちで逃げた。

 そしてネルソン警部はこれを追った。
 力の限り追った。 
 全速力で追った。
 過去にオリンピックで金メダルを取る事を目指して努力をしたとき以上のスピードで追った。

 因みに、犬とジョンは置いていかれた。
 見事なまでに置いていかれていた。
 
 尚、問題のハンカチは本当にニックの所有物であり、確かにシェルとは関係があるのだが、ネルソンはシェル本人に追いつくことは出来なかった。





 光の刃の矛先がマーティオに迫る。それに対抗するかのように銀色に光る大鎌の矛先がサイボーグ刑事に迫る。
 最初に襲い掛かってきたのはマーティオの銀の刃だ。
 しかし、サイボーグ刑事はそれを倒れこむようにして体制を崩す事で、横一閃の一撃を回避する。

 サイボーグ刑事はすぐに起き上がる。
 大鎌を思いっきり振ったので、すぐに攻撃できないはず、という理論から辿り着いた行動である。
 しかし、最終兵器はその理論を崩す物であった。

「――――――!」

 何かが空を切った。
 それは先ほど大鎌を回避してから間もないタイミングだ。
 しかし思いっきり振りかざしたのだから、曲刃では無いはずである。
 
 そこから現れたのは刃であった。
 それも柄から突き出すように生えている一本の刃である。

「これは!?」

「喰らえ……!」

 柄から生えた刃はサイボーグ刑事の顔面に迫る。
 しかし、サイボーグ刑事はとっさにレーザーソードを構えた。

 次の瞬間、銀の刃と光の刃がぶつかり、激しい衝撃が両者の間に生じた。

「ちっ……!」

「レーザーで斬れないとは………その大鎌の材質は一体?」

「ぶっちゃけ、こっちが一度聞いてみたいな!」

 マーティオは本音を叫ぶと、両手で握っている柄を持ち直し、そのまま扇風機の様に大鎌の柄を回転させる。重量をまるで感じないから、大鎌をあまり扱ったことが無いマーティオでも簡単に出来る。
 サイボーグ刑事はバランスを崩すと、右手の拳をマーティオに振りかざす。

 だが、この一撃は鈍い音と共に柄に受け止められた。
 しかし、サイボーグ刑事は笑みを浮かべた。

「零距離ロケットパンチ………!」

「――――――!」

 その予想だにしなかった行動により、マーティオは柄の防御ごとぶっ飛ばされた。
 彼は宙に浮くと、そのまま放物線を描きながら地面に叩きつけられた。

「ぐっ――――!」

「そのまま受けるがいい! 必殺!」

 サイボーグ刑事はマーティオが身を起こす前に勝敗を決めるつもりである。
 しかし、何故かサイボーグ刑事は妙なポーズをとりながら叫ぶ。

「悪人消滅! 受けよ、ジャスティスカノン!!」

 すると、サイボーグ刑事の胸部から巨大な銃口が現れ、そのまま銃口から巨大なレーザーが発射された。

 それは周囲の障害物をお構いなしに破壊しても止まらず、そのままマーティオに牙を向ける。

「――――――――おい、最終兵器。俺はこんなくだらない物に殺される気は無いぞ」

 マーティオは独り言のように呟くと、大鎌から彼の脳に直接語りかける声が響いた。

(そりゃあ、俺だってそうさ)

「なら、何とかしてあれを止めてみろ。仮にも最終兵器と言われてるなら、あんなレーザー防いで見せろ!!」

 すると、大鎌の柄から生えていた刃が引っ込み、元のサイズへと戻った。
 しかし、その後柄が分離し始めた。
 チェーンでもつければヌンチャクにでもなりそうな感じである。

「見せてみろよ。――――――お前の力!」

 次の瞬間、レーザーの衝撃が襲い掛かった。




 サイボーグ刑事は勝利を確信していた。
 何と言っても直径2m近くのレーザーを受けたのだ。
 変に頑丈で材質が不明で、何かと不思議機能がある大鎌はともかく、マーティオは完全に消し飛んでいるはずである。

「極悪人。―――――貴様の負けだ」

 しかし、その言葉を発した瞬間、聞こえるはずが無い声が聞こえてきた。

「そいつは鏡を見て言うべきだ。――――――おっと、失礼。貴様は自分の姿が嫌いだったな」

「何っ!? まさか――――――」

 爆風が巻き起こる中、サイボーグ刑事のマスクは男の影を確認した。

「馬鹿な! どうやってレーザーから身を守ったのだ……!」

 しかし、その答えはマーティオからの返答が返ってくる前に明かされた。
 大鎌の柄が幾つも分離することにより、マーティオをピラミッドの形をしたバリアを発生させる事によって守っていたのだ。

「いい武器だと思わないか? いざと言う時にはバリアを発生できるんだってさ。しかもこの通り非常に頑丈と来た」

 マーティオは無傷だった。ピラミッド型のバリアはレーザーから完全に彼の身を守ったのだ。

「ならば至近距離から放ってくれる!」

「無駄だ。もう、そいつは喰らわない」

 マーティオは確信に満ちた瞳をサイボーグ刑事に向けた。
 それと同時、柄が合体していき、最後に刃が生えるようにしてサイズが構成されていった。マーティオは、それが自分から自らの手に握られに行った事に満足しつつ、

「さあ、記念すべき俺が扱うサイズの初獲物だ。―――――逃がさない」

 マーティオは仮面で顔を隠しているが、その不気味な笑みから発せられる気味の悪さはサイボーグ刑事に確かに伝わった。

「音も無く、気配も無く敵を殺す。――――――必殺……!」

 マーティオは構える。それは大鎌を振りかざしている姿である。
 しかし、

(いかに大鎌とはいえ、距離がありすぎる!)

 サイボーグ刑事は再び戦闘体勢に入る。しかし、その視界から何時の間にかマーティオの姿が消え去った。
 何処に消え去ったのかと、サイボーグ刑事は周囲を見渡そうとするが、それは叶わなかった。何故なら、自分の胴体が右斜め横に綺麗に切られているからである。

「『沈黙の襲撃者』………とっさにしては良いネーミングだな」

 マーティオはふっ、と鼻で笑いながら自分の目の前に倒れているサイボーグ刑事を見る。

「むかつくぜ…………切ってもまた元通りになるってのがな」

 それは、部品を代えれば何度でも復活すると言う、嫌な方程式から来た答えである。
 マーティオの機嫌は悪くなる。
 エリック曰く、「殺戮症」の原因である。

「イッソ………跡形も無く焼き払うのが一番かも知れないな」

 マーティオは早速、火の元になりそうな物を探そうとする、が。

「マーティオぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 後ろから聞きなれた声が聞こえる。
 ふと背後を見てみれば、何故かローラースケートを履いて超高速のスピードでこちらに突っ込んできているエリック(主人公)の姿があった。

「エリック……ぐはっ!?」

「ぐおっ!?」

 二人は見事に激突。そのまま倒れこんでしまった。
 尚、彼等が無事にニックの部屋にたどり着いたのはそれから一時間後の話であり、ニックがボロボロな姿で帰ってきたのは、その4時間後だった。





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